東山のキツネ

東山茶業組合

2009年10月13日 07:21



おはようございます。天高い秋、三連休には掛川は大祭りも開かれ、いよいよ
秋本番になっています。深蒸し茶の東山茶業組合です。

秋に野に遊ぶのは人間ばかりではありません、いろいろな動物が出てまいり
ます。今朝はそんなお話です。

「コンコン コンコン」と声がします。

東山の茶畑で秋の支度をしていた杉山さんが腰を伸ばしてみると誰もおりま
せん。
秋の陽はつるべ落としと言います。仕事をする時間も短くなりますから杉山さ
んは忙しく働いているのです。

「コンコン」、ほらまた声がしました。
今度は茶畑の畝の間からキツネが顔を出しているのを見つけました。

「おーや どうしたんだいキツネさん」、やさしい杉山さんが聞きますと、最初
はモジモジしていたキツネでしたが、勇気を出して話をはじめました。

「粟ヶ岳の家には子狐がいるんですが、今年はインフルエンザが流行する
と聞いて心配でなりません」 

キツネは心配そうな顔でそう言うのです。

杉山さんは首をひねりましたが、キツネにあげられるワクチンがあるとは聞い
ていません。でもキツネも粟ヶ岳の裾野に住まう東山の仲間の一匹です。
その家族が心配ごとを持っているなら手助けをしてあげなくてはなりません。

「そうだ!」杉山さんはキツネに言いました。
「東山で作っているお茶は大層いいお茶なんだけれど、キツネもお茶を飲ん
でみたらどうだろう、うがいをするのも風邪に効くと言うぞ」

これは名案です。キツネのお茶は組合が用意して粟ヶ岳の巣穴に届けられ
ました。キツネたちは喜んでお茶を飲むようになったのだそうです。

それから杉山さんたちがお茶畑で仕事をしていると、ときどき粟ヶ岳の中腹あ
たりから煙が立つのを見ることがあります。

「今日もお茶飲んでるかなあ」、東山の人は煙を見てキツネがお湯を沸かして
いるのを知るのでした。

キツネは毎日お茶を飲みましたから風邪ひとつひきません、三匹の子キツネ
もころころと転がるように粟ヶ岳で遊んでいます。

毛並みもツヤツヤになったキツネたちはそれからお茶飲みキツネと呼ばれる
ようになりました。 今も粟ヶ岳のどこかに住んでいるそうですよ。
それは煙でわかります。お湯を沸かして美味しいお茶をいれていますからね。

おしまいおしまい。

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